宵闇の狼(9)



 宵闇に狼
 モトイは言う。
 夜は嫌いだ、狼男が鳴くから。
 そう言って蹲る彼の姿がまるで痩せ細った狼なのに。

 私は恐る恐る腕を伸ばして狼のたてがみに触れた。
 ピクリ、と震えたきり彼は動かず、静かに寝息をたてている。

 彼の瞼が閉じると私の夜が訪れる。
 私の闇に光が差してはならない。

 彼が私に触れる理由がなくなるから。